相続放棄をする理由や動機について

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年09月12日

1 被相続人には借金しかなかった場合

 被相続人が債務しか有していなかったり、わずかな預貯金があるだけであとは借金しかないという場合、俗に債務超過といいます。

 債務超過は、相続放棄の理由や動機としては最も多いものの一つです。

 被相続人が債務超過に陥っている場合、相続人は得られる財産よりも支払わなければならない金銭の方が多くなってしまいますので、経済的側面に着目すれば、相続放棄をするのが得策ということになります。

2 相続財産を特定の相続人に集約したい

 ある相続人に、遺産を全て集約させると同時に、その相続人が負債も負担するということを実現するために、相続放棄が用いられることもしばしばあります。

 例えば、先祖代々の家や土地を守るため、家を継ぐ相続人に財産を集めるということが多いです。

 遺産分割協議によって、遺産を特定の相続人に集中させ、他の相続人は遺産を取得しないという内容で合意をすることはできます。

 いわゆる、事実上の相続放棄と呼ばれるものですが、この事実上の相続放棄では、負債を特定の相続人に集中させることはできません。

 免責的債務引受という手法で実現できないこともありませんが、債権者側の同意が必要です。

 そこで、相続放棄によって、他の相続人は初めから相続人でなかったことにすることで、特定の相続人に全ての遺産、負債を集中させることができるようになります。

3 相続に関わりたくない

 元々被相続人と疎遠であったため相続には関わりたくない場合や、性格に問題がありトラブルを起こすことが想定される相続人がいる場合などは、相続との関係を断つために相続放棄を使うということもあります。

 相続放棄をしてしまえば、初めから相続人でなかったことになりますので、たとえ相続に関わりたくても、もはや相続に関与することはできなくなります。

 そのため、他の相続人と相続手続きに関する話し合いや連絡をしなくてもよくなくなります。

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