遺言が発見された場合の相続放棄

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年11月18日

1 遺言と相続放棄

⑴ 遺言があっても相続放棄はできる

 被相続人の遺言が遺されているケースにおいても、相続放棄をしたいと思うこともあります。

 遺言があっても、相続放棄をすることはできます。

 遺言がない場合と変わることはなく、裁判所を通じて決められた手続きをすれば相続放棄はできます。

 特に他の相続人の合意が必要ということもありませんので、ご安心ください。

 他の相続人は相続放棄をしない場合、通常は、遺言の内容のうち、相続放棄をした相続人に関する記載部分が無効となります。

 当該無効部分は、改めて他の相続人間で遺産分割協議を行うという形になります。

 

⑵ 遺言があっても相続放棄をするケース

 ところで、遺言があっても相続放棄をしたいと考えるケースとは、どのようなものでしょうか。

 よく見かけるのは、次の3つです。

 1つめは、被相続人や他の相続人と疎遠であり、相続財産の内容にかかわらず、そもそも相続に関わる気がない場合です。

 2つめは、自分に不利な内容の遺言である場合です。

 被相続人と仲が悪かったりした場合や、他の相続人が自分に有利な遺言を遺させようと企てていた場合にこのようなことが起きます。

 具体的には、価値のない原野を相続させるという内容や、負債を全部負担させるような内容の遺言が作成されていることがあります。

 3つめは、家族関係も悪くなく、遺言の内容自体にも問題がなかったとしても、被相続人に多額の負債があり、債務超過に陥っている場合です。

2 遺言がある場合の相続放棄の期限

 遺言がある場合の相続放棄の期限は、大きく分けて2つのパターンがあります。

⑴ 被相続人の死亡を知った後で、遺言の存在を知った場合

 この場合、原則として、被相続人の死亡を知った日から3か月以内に相続放棄を行うことになります。

 

⑵ 遺言に関する連絡を受けて被相続人死亡の事実を知った場合

 実務上よく見るのは、被相続人が自筆証書遺言を遺していた場合です。

 被相続人と疎遠である場合などには、他の相続人が遺言検認の申立てをしたことにより、裁判所から遺言検認期日通知書が届いて初めて死亡を知るというケースがあります。

 この場合、遺言検認期日通知書を受け取って読んだ日が、相続の開始を知った日となりますので、この日から3か月以内に相続放棄を行うことになります。

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