相続放棄をすると土地はどうなるか

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年07月25日

1 相続放棄の効果

 相続放棄は、はじめから相続人ではなかったことになるという法的効果を有しています。

 そうすると、相続放棄の申述が受理されたのであれば、相続財産とは一切無関係になるのが原則です。

 もっとも、民法上、相続放棄をした際に相続財産を占有していた場合には、その財産に関する保存義務というものが課せられます。

 次の順位の相続人がいる場合には、その相続人が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を行うという義務です。

 問題なのは、次の順位の相続人がいない場合です。

 この場合、理論上、延々と相続財産の保存義務を負うことになります。

 預金や株式などの金融資産は、凍結するなどすれば、当面は価値が棄損したりすることはありません。

 問題になるのは、土地などの不動産です。

 これについては、放置すると時間の経過とともに様々なトラブルが発生する可能性があります。

 これを解決するには、最終的には相続財産清算人による清算が必要になります。

2 相続財産清算人の選任申立て

 相続人が不在となった土地は、放置しておくと雑草が覆い茂って近隣に迷惑が生じたり、不法占有者が現れたりなど、何らかの責任を追及される可能性があります。

 特に、土地上に建物がある場合は、老朽化による倒壊等の危険性があるので、よりリスクは高まります。

 そこで、裁判所に対して、相続財産清算人の選任を申立てるという解決策があります。

 参考リンク:裁判所・相続財産清算人の選任

 相続財産清算人が選任されると、相続財産の管理処分権は相続財産清算人に移ります。

 これにより、元相続人は管理責任から解放されます。

 もっとも、相続財産清算人が選任されたからといって、完全に手放しにできるわけではありません。

 相続財産清算人が相続財産を管理し、最終的に処分して清算するために必要な情報や資料は、随時提供する必要があります。

 特に土地や建物については、近隣の住民の情報や、境界などの情報が必要であるため、立ち合いなどが必要になることもあります。

 これらのプロセスを経て、無事売却等の処分ができれば、相続財産とのかかわりを完全になくすことができます。

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