相続放棄をした場合の死亡保険金の扱い

文責:所長 弁護士 伊藤貴陽

最終更新日:2024年07月11日

1 相続放棄をすると相続財産は受け取れなくなる

 相続放棄をすると、はじめから相続人でなかったことになるという法律効果が生じます。

 これにより、一切の相続財産を取得する権利を失います(併せて、債務を負担する義務もなくなります)。

 相続財産には、被相続人がお金を受け取る権利(金銭債権)が含まれます。

 預貯金も厳密には金銭債権の一種です。

 そのほか、公的機関に対する還付請求権などもあります。

 ここで、死亡保険金は相続財産に含まれるかが問題となります。

2 死亡保険金の法的性質

 結論から申し上げますと、死亡保険金は相続財産に含まれないため、相続放棄をしたとしても受け取ることができます。

 相続財産に含まれないため、受け取っても法定単純承認事由に該当する行為には該当しません。

 しかし、保険契約の内容によって、相続財産に含まれないケースと含まれるケースがあります。

 例えば、被保険者が被相続人、受取人が特定の(元)相続人である場合の死亡保険金は、相続財産には含まれないことになります。

 このような死亡保険金は、被相続人が死亡したという事実があった場合、あくまでも保険会社から(元)相続人に直接支払われるものなので、(元)相続人に属する権利です。

 そのため、相続財産には含まれないことになります。

 見方を変えますと、死亡保険金の受取人は、推定相続人以外の人を指定することもできます。

 やや感覚的な話になりますが、相続人でない人にも支払われるのですから、死亡保険金が相続財産に含まれないという理解をすることができます。

3 解約返戻金については注意が必要

 死亡保険金と似て非なる物に、生命保険に関する権利というものがあります。

 これは、契約者が被相続人、被保険者が被相続人以外の人、受取人が被相続人になっている生命保険です。

 貯蓄性がある場合、解約すると解約返戻金を受け取ることができます。

 もっとも、これは被相続人が保険会社に対して金銭を請求できる権利であるため、相続財産となります。

 そのため、相続人が解約して、解約返戻金を受け取ってしまうと、法定単純承認事由に該当する行為に該当してしまいますので注意が必要です。

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